東京・三軒茶屋にあるギャラリー世田谷233のブログです。
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『くまのパディントン展』ミュージアム・ギャザリング

Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されている『くまのパディントン展』。社会派コント集団「ザ・ニュースペーパー」のメンバーとして活躍されている福本ヒデさんをゲストに、ザ・ミュージアムのスタッフのみなさんと一緒に『ミュージアム・ギャザリング』を開催しました。
※『ミュージアム・ギャザリング』は美術館で展覧会の感想を語りあい、アートの読み解きを楽しむプロジェクトです。
 


・日時: 2018年6月12日(火)

・ゲスト:福本ヒデさん(芸人/ザ・ニュースペーパー)

・参加者: ギャザリングスタッフ(鳥屋めぐみ、佐藤友里江、中根大輔



鳥屋:いつもザ・ミュージアムの展覧会をご覧いただいてありがとうございます。今回の『くまのパディントン展』いかがでしたでしょうか?
 

ヒデ:そもそもパディントンについては名前を知っている程度だったので新鮮でした。うち(ザ・ニュースペーパー)のメンバーやスタッフにも聞いてみたんですけどほとんど知らなかったですね。特に男性は(笑)。僕なんか“くまの〜”って来たらやっぱり黄色い方が思い浮かんじゃう(笑)。
 

中根:はちみつ好きとママレード好きもちょっとかぶってますしね(笑)。僕もパディントンに関しては、名前を聞いたことがあるぐらいの知識で、“パディントン”の名前が駅名だったのも初めて知って驚きました。
 

ヒデ:だからお話の内容が気になって、展覧会を見る前に児童書のパディントンの本を買いましたよ(笑)。そしたらストーリーもすごく面白いし、とにかく挿絵がよかった。あんまり描き込んでいなくてシンプルなんです。パディントンも線だけで表現されているし、パディントンと暮らすブラウンさんも顔がおぼろげではっきり見えない。それって見る側に想像する余地を残してくれているんだと思うんですよね。絵本ではないので、どちらかというと絵よりも物語がメイン。挿絵からいろいろと想像することで、見る人によってそれぞれのパディントンが存在するんだろうなって。展覧会では挿絵もたくさん展示されていましたが、いつも見ている絵画が中心の展覧会とはまた違った感覚で見られました。

 


(カタログを楽しそうに眺める福本ヒデさん)

 

鳥屋:おっしゃるとおりですね。いろんな作家さんがパディントンのヴィジュアルを手がけているのもこのシリーズの特徴ですが、特に児童書の挿絵を描かれたペギー・フォートナムさんのパディントンはシンプルです。絵で何かを伝えるというより、想像力を掻き立てる感じです。
 

ヒデ:今回4コマ漫画が展示されているのを知って、まずそこから見たんですけど、本当にストーリーが楽しいですよね。「ママレードお大食いコンテスト」は結構自意識過剰ですし(笑)、「ポスターはりを見ながら」なんか哲学的で考えさせられますよ(笑)。全体的にイギリスらしいジョークが効いてますね。パディントンのことをあんまりご存じない方はこのコーナーから見るのがオススメです。

展覧会会場で気づいたんですけど、作品を見ながら微笑んでいる方がいらっしゃるんですよ。もちろん、パディントンを知っていて、かわいいなとか懐かしいなとか思っている方もいるんでしょうけど、単純に物語やパディントンの行動を見て楽しんでいる方も結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。
 

鳥屋:それは本当に嬉しいです。パディントンの振る舞いや考え方って愛着がわきますよね。すごく人間っぽくて、私たちの近くにいる感じがします。だから男性のお客様も結構多いんですよ。


(左が今回の展覧会担当の鳥屋さん、右がスタッフの佐藤さん)



ヒデ:パディントンってどこか正義感が強すぎるところがあって(笑)、すぐに本音を言っちゃうんです。物語の中でも好き嫌いをはっきり言うし、買い物のときにもクレームをつけたり値切ったり(笑)。特に日本人だとなかなか言わないし、言えないようなことも平気で言うんです。それでいて最後は何とかなっちゃう(笑)。そこが楽しい。
 

中根:ポジティブな世界観がいいですよね。でも会場内で流れていた原作者のマイケル・ボンドさんのインタビュー動画を見ると、彼の戦争体験がパディントンのベースにあることがわかります。だからこそ「このくまは幸せな家族に引き取られる設定」なんだと。それを聞いた時に、パディントンに対する見方がガラッと変わりました。パディントンはハチャメチャな部分もあるけれど、彼が元気に活躍していること、それを周りの人が受け入れていること、それ自体が幸せなことなんだなと。だから見る方も癒やされる。
 

鳥屋:実は今回の展覧会も、きっかけのひとつとしてマイケル・ボンドさんの戦争体験の話に深く感銘を受けた新聞社の方が企画を立ち上げられたんです。
 

ヒデ:確かにすごく深い部分もありますよね。ただいろんな物事に巻き込まれるだけではなくて、自分から進んで関わっていく積極性もある。だから単純に真っ直ぐなだけの主人公じゃないと思います。全く知られていない土地からやってきた設定もありますから、例えば他の国の人たちから見たら、遠くの国からイギリスにやってきて活躍する、ある種のヒーローに見える部分もあるのかもしれませんね。みんなの”代役”みたいな部分もあるからこそ、世界中の人々から愛されるのかなと。
 

中根:ヒーローって大きな意味で捉えると、何も正義の味方だけじゃなくて、とにかくいろんなことをやってみんなに注目される存在も一種のヒーローですよね。
 

ヒデ:パディントンのような個性的なキャラクターって、例えば日本のマンガやアニメでも、すごく仲のいい少年が主人公でいて、その子のそばにずっといるっていうような設定が多いと思うんですよ。で、その少年と友達たちとの関係の中で物語が展開する、みたいな。でもパディントンは、普通の家族と一緒にいるんですよね。日常の過ごし方もごく普通(笑)。散歩したりお茶をしたり。だからとにかくいろんな人と関係があるし、みんなに愛される。そういうメッセージも含まれているんじゃないかと思います。
 


中根:展覧会会場もいろんな立体物が多くて楽しかったです。アニメに使われた小道具を見られたのも貴重ですし、骨董屋のグルーバーさんのお部屋を再現したのも面白かった。まさにパディントンの世界にいるような感覚ですね。
 

鳥屋:グルーバーさんのお部屋を制作する際には、パディントンのぬいぐるみを置こうかという意見も出たんですが、それよりも“今までパディントンがそこにいた”という雰囲気を出す方向にしました。みなさんの想像や心の中にその人だけのパディントンが存在してほしいなと。そこはちょっとこだわったところです(笑)。
 

佐藤:あと、パディントンを知らない方はもちろんですが、よく知っている方にも楽しんでいただけると思います。例えばパディントンシリーズの生みの親であるマイケル・ボンド氏が使っていらっしゃったタイプライターもその一つ。あれはマニアの方にも喜んでいただけると思います(笑)。
 

ヒデ:そういう意味では、今回の展覧会は、普段美術館であんまり見かけないお客様も多い気がしましたね。お子様連れの方とか、デートで来ているようなカップルとか。有名な絵画がメインのような展覧会よりもリラックスした気分で入れるのかもしれません。美術館に行くいいきっかけになりますよね。こうやってもっといろんな方に美術館に足を運んでいただきたいです。
 

中根:このミュージアム・ギャザリングも、もっと気軽に美術館に行こう、美術館に行くと楽しいよ、ってことを伝えるためにやっているんですが、ヒデさんがやっていらっしゃる美術検定とか、アートエバンジェリストの活動もそういうことですよね。
 

ヒデ:そうなんです。アート、芸術、っていうだけで構えるんじゃなくて、もっと軽い気持ちで見てほしいんです。お目当ての作品を見に行くのもいいですが、「時間が空いたから、ちょっと絵でも見よう」、でいい。そうやってアートに触れることで人生が豊かになると思うんですよね。そう考えるとザ・ミュージアムが渋谷にあるっていうのがあらためてありがたいです。今回の展覧会を見ると、パディントンを知っている人も知らない人も、パディントンの楽しさ、深さにハマると思います。あと、絶対ママレードが食べたくなります(笑)。
 


(中根も一緒にフォトスポットで撮影していただきました)


・Bunkamura ザ・ミュージアム『くまのパディントン展』は6月25日(月)まで!

・『ザ・ニュースペーパー』結成30周年記念全国公演実施中!



<編集後記>
パディントンの世界観にこれだけしっかり触れるのは初めてでしたが、さまざまなアート、芸術に触れられているヒデさんならではの視点と楽しいトークで、たくさんの気づきがありました。ここにまとめた内容以外にも、いろんなテーマで盛り上がり、1時間にわたる楽しいギャザリングとなりました。ヒデさん、鳥屋さん、佐藤さん、ありがとうございました。みなさんも『くまのパディントン展』にぜひっ。そしてみんなで感想を語り合いましょう!


<追記>

ギャザリング中にみんなでいただいたのが、Bunkamuraのレストラン「ドゥ マゴ パリ」で提供されているママレードをプラスしたアイスフロートのオレンジエール。『くまのパディントン展』とのタイアップメニューで、展覧会開催期間限定だそうです!ママレードの爽やかな甘さが美味しゅうございました。

(文/写真:中根)

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